「まるで、ミミズだな」
そんな声をキャッチして、「そうかもね」と頷いた。
今の私はミミズのような働きをしています。
ミミズは 有機物を分解しやすい状態にして微生物に提供するという役立つ仕事もしていますが、もっとシンプルで奥の深い穴を掘る仕事は、生態系を支える全体繁栄の裏方仕事です。
ミミズが四方八方に穴を掘り巡らせることによって、土壌は耕された状態になります。
土壌に隙間ができて、空気の通り道や、植物の根が伸びるスペースができます。
土が掘り返されていると、空気が適度に供給されるため、微生物が活発になって、有機物の分解が促進します。
結果として、土の中の栄養分が多くなり、植物の成長にとって快適な土壌環境になります。
このように、主な働きの一つが『有機物を分解する補佐』です。
栄養に分解するのは微生物の働きなので、あくまでも補佐。
『大地の腸』とは、アリストテレスがミミズにあてた表現で、ミミズの糞は、栄養分が抜けきった残りカスというわけではありません。
腸管にある石灰腺の働きにより、ph値を整えて、窒素、カリウム、マグネシウム、リンなどを豊富に含んだ養分を土に戻しているのです。
《ひたすら穴を掘る、普通の生命活動が全体貢献になっている》なんて、ミミズには寝耳に水でしょうし、ともすると「それがどうした」と軽く見られがちな行為が、自然生態系を支える土台になっているのです。
なにより、地球環境を整える大仕事を担っていても、彼らは使命感など持っていません。それも生きる姿勢の学びです。
人型生命体の《ミミズに学ぶ普通の生命活動》は、穴を掘る=天意の体現であり、この作業により、空間全体の循環を促進します。
そして、周囲に向けて、感謝と祝福という栄養分たっぷりの意氣(息)を放出していくのが、普通の生命活動です。